
先生
さあ、夕飯の買い物をして帰ろうか。パレット君、ドレッシングを選んでくれるかな?この棚にあるはずだよ。

パレット君
……(棚の前で固まって、目が泳いでいる)……。うう、ダメだ……。先生、目が回って吐き気がしてきた。ドレッシングがどこにあるか、全然見つけられないよ。

先生
え? 目の前にあるよ。ゴマ、タマネギ、シーザー……何十種類も並んでるじゃないか。ここから好きなのを選ぶだけだよ?

パレット君
その「何十種類」がいけないんだ。僕の目には、赤、黄色、緑のパッケージ、そして「期間限定!」「大増量!」っていう派手な文字が、全部一斉に飛び込んでくるんだ。まるで、数千個の物体が「僕を見ろ!」って叫びながら、色の洪水になって襲ってくるみたいだ。

先生
色の洪水……。僕らは「ドレッシング」を探そうと思えば、他の商品は「ただの背景」として無視できるけど、君の目には全てが「主役」として映るのか。

パレット君
そう。棚全体が、極彩色の巨大な壁画みたいに見えて、一つ一つの区別がつかないんだ。情報の雪崩に埋もれて、脳みその処理が追いつかない。……先生、お願い。いつもの「あのメーカーの、あの色のやつ」を取って。それなら分かるから。

先生
選択肢が多すぎることが、君にとっては自由じゃなくて「情報の暴力」になるんだね。「いつもと同じ」を買うのは、冒険したくないんじゃなくて、情報の海で溺れないための命綱だったのか。
■景色が「うるさい」聴覚過敏の人が「音」を選別できないのと同じように、視覚過敏の人は「見ているもの」の選別が苦手な場合があります。
スーパーの陳列棚、ドン・キホーテのような圧縮陳列、散らかった部屋などは、彼らにとって「視覚的な騒音(ビジュアル・ノイズ)」が充満している状態です。
■ウォーリーを探せないたくさんの色や形の中から、目的のものを探し出す機能を「視覚探索」と言いますが、視覚過敏があるとこれに膨大なエネルギーを使います。
商品のパッケージの文字、値段のポップ、隣の商品の色……全てが網膜に焼き付いて処理落ち(フリーズ)し、ひどい場合は「スーパー酔い」と呼ばれる体調不良を起こします。
■私たちにできること「早く選んで」と急かすのは禁物です。