
カイ
信じられない! あの上司、頭がおかしいんじゃないですか!?レンさん聞いてくださいよ。僕が「朝礼なんて時間の無駄だから廃止しましょう」って提案したら、猛反対されたんです!

レン
やあカイ。今日も鼻息が荒いね。「時間の無駄」とはまた、随分と直球な提案をしたもんだ。

カイ
だって事実じゃないですか!いちいち集まって連絡事項を聞くより、チャットで送ったほうが効率的です。チームのメンバーだって、**「みんな」**そう思ってますよ! 普通に考えて当たり前でしょう?

レン
…その「みんな」というのは、具体的に誰と誰のことだい?チーム全員にアンケートでも取ったのかい?

カイ
いや、アンケートは取ってませんけど…。同期のサトウも「朝礼だるい」って言ってたし、飲み会でもみんな愚痴ってるし。だから世の中の9割くらいの人は、僕と同じ意見のはずです!

レン
9割か。随分と大きく出たね。カイ、残念ながら君は今、**「虚偽の合意効果」**という鏡の部屋に閉じ込められている。自分の意見が「多数派」だと錯覚し、自分と違う意見の持ち主を「異常だ」と切り捨てている状態さ。

カイ
錯覚!? いやいや、レンさんだって朝礼は無駄だと思いますよね? ね?

レン
僕は効率化には賛成だが、顔を合わせる重要性を説く人がいても不思議ではないと思うよ。問題なのは、君が「自分と違う意見の人」の存在を想像できなくなっていることだ。君の周りには「君と似た考えの人」が集まりやすい。だから君は「世界中が自分と同じ考えだ」と勘違いしてしまうんだ。

カイ
うっ…。確かに、反対意見を持っていそうな人には、最初から相談してなかったかも…。

レン
だろうね。君が見ている「みんな」は、君の意見を映し出した鏡にすぎない。その提案を通したいなら、「当たり前でしょ」という態度を捨てて、「なぜ朝礼が必要だと考える人がいるのか」を理解することから始めなきゃね。

カイ
なるほど…。「みんなそう思ってる」を武器にして、相手を論破しようとしてただけか…。恥ずかしい。鏡に向かって演説してたようなもんですね。

レン
気づけたなら上出来だ。「普通はこうだ」という言葉を飲み込んだ時、君の世界はもっと広くなるはずだよ。
やあ、レンだ。今回のテーマは「虚偽の合意効果(False Consensus Effect)」。
自分の意見や行動、価値観が、実際よりも広く「世間一般に共有されている(多数派である)」と過大評価してしまう心理バイアスのことだ。
■「サンドイッチマン」の実験スタンフォード大学のリー・ロスが行った有名な実験がある。
彼は学生たちに、「『ジョーの店で食事をしよう』と書かれた奇抜な看板をぶら下げて、キャンパスを歩いてくれないか?」と頼んだ。
結果はこうだ。
どちらのグループも、「自分と同じ選択をするのが普通であり、多数派だ」と信じて疑わなかったんだ。
■なぜ「みんな同じ」と思うのか?これには「利用可能性ヒューリスティック」が関係している。
私たちは普段、自分と趣味や考えが似ている家族や友人に囲まれて暮らしている。
そのため、脳内ですぐに思い浮かぶ「他人の意見」は、自分と同じ意見ばかりになる。
その結果、「私の周りがそう言っている」=「世の中のみんながそう言っている」という誤った計算式が成り立ってしまうんだ。
■処方箋:自分は「サンプル数1」会議や議論で「普通、こうでしょ?」「みんな言ってるよ」と言いたくなったら、急ブレーキを踏もう。
「今の『みんな』は、自分の周りの数人だけではないか?」自分という人間は、世界でたった一つのサンプルに過ぎない。
「違う意見の人もいて当然だ」という前提に立つことが、真のコミュニケーションの始まりなんだよ。