
タヌキ店長
チェッ……なんだよあれ。クマ社長が新車で買った「黄金のスポーツカー」、見た?あんな派手な色、成金趣味でみっともないよね。それに、車高が低すぎて森の道じゃお腹を擦るし、荷物も載らないし、最悪の車だよ。あーあ、あんなの買わなくてよかった! 僕の軽トラの方がよっぽど優秀だよ。

フクロウ先生
……。君、昨日はカタログを見ながら「カッコいい! 宝くじが当たったら絶対に買うんだ!」と目を輝かせていましたよね。値段を見て「絶対に買えない」と分かった途端、その言い草ですか。

タヌキ店長
べ、別に悔しいわけじゃないぞ!冷静にスペックを分析した結果、あの車には価値がないと気づいただけだよ!僕みたいな賢い消費者は、あんな無駄遣いはしないのさ。

フクロウ先生
それが典型的な『認知的不協和』の解消行動です。「あの車が欲しい」という自分の本心と、「お金がなくて買えない」という現実。この2つが矛盾すると、脳は強いストレス(不協和)を感じます。そこで、手に入らない現実を変えるのは難しいので、「あの車は欲しくない(価値がない)」と自分の本心の方をねじ曲げて、心の平穏を保とうとしているのです。

タヌキ店長
うぐっ……図星を突くなよ。心が楽になるなら、嘘でもいいじゃないか!「あの葡萄は酸っぱい」って思い込めば、食べられなくても惨めじゃないんだから!

フクロウ先生
精神衛生上はそれで良いかもしれませんが、ビジネスでは危険ですよ。「店が暇だ」という現実を、「客に見る目がないからだ」とか「今は充電期間だからだ」と都合よく解釈して、改善努力を放棄することに繋がりますからね。

タヌキ店長
ギクッ!そ、それは違うよ!僕の店がガラガラなのは、選ばれたVIPしか入れない「隠れ家」としてのブランディング戦略なんだから!

フクロウ先生
……はいはい。そうやって現実逃避をしている間に、店が潰れて「隠れ家」どころか「廃墟」になりますよ。
アメリカの心理学者レオン・フェスティンガーが提唱した理論。自分が持っている「信念」と「行動(または現実)」が矛盾している時、人は不快感(不協和)を覚え、その不快感を解消するために、信念か行動のどちらかを変えようとする心理状態のことです。
酸っぱい葡萄の論理
イソップ童話のキツネは、木の上にある葡萄を取りたくても届かなかった時、「どうせあの葡萄は酸っぱくて不味いに違いない」と捨て台詞を吐いて立ち去りました。
「葡萄を取りたい(欲求)」と「取れない(現実)」の矛盾を解消するために、「葡萄に価値はない(認知の変更)」という嘘をついて自分を納得させたのです。
ビジネスへの応用:購入後の後悔を消す
高額商品を買った直後、人は「本当にこれで良かったのか? 無駄遣いではなかったか?」という不安(バイヤーズ・リモース)に襲われます。これも不協和の一種です。
これを解消するために、企業は以下の対策を行います。
顧客の不協和を解消してあげることが、リピーター定着の鍵となります。