
タヌキ店長
最近、サルの散髪屋がすごい人気なんだよ。あそこ、カットする前に必ず「美味しい高級バナナ」を一本無料でくれるんだ。太っ腹だよねぇ。僕ならケチって皮しかあげないのに。

フクロウ先生
……君の店が流行らない理由がよくわかります。そのサル君は、単に優しいからバナナを配っているわけではありません。『返報性の原理』を利用して、客を逃げられないようにしているのですよ。

タヌキ店長
返報性? なにそれ、新しい必殺技?

フクロウ先生
違います。人は他人から何か施しを受けると、「お返しをしなければ申し訳ない」という感情を抱く生き物なのです。最初にバナナをもらってしまうと、客は心理的に「断りにくい状態」になります。その結果、高額な「プレミアム毛づくろいコース」を勧められても、つい契約してしまうのですよ。

タヌキ店長
うわぁ、怖い!「バナナ一本」という小さな借りを、「高いコース」で返させてるのか!スーパーの試食コーナーでウィンナー食べたら、買わなきゃいけない気になるのと同じだね。

フクロウ先生
その通りです。「無料プレゼント」や「お試しセット」は、ただのサービスではなく、相手の「義理堅さ」を刺激する強力なフックなのです。先に与える者が、後で大きく得るのです。

タヌキ店長
なるほど! 「損して得取れ」ってことか。よし、僕も店の前を通る人に、在庫処分の「腐りかけのドングリ」を無理やり投げつけるぞ!受け取ったら最後、壺を買うまで帰さないからな!

フクロウ先生
それは「親切」ではなく「投石」です。ゴミを押し付けられてお返しをしたくなる人はいませんよ。
社会心理学における基本的な概念で、「他者から何かを与えられたら、自分も同様にお返しをしようとする」心理的傾向のことです。
強制的な「借り」の意識
この心理の恐ろしい点は、「頼んでいない親切」に対しても発動することです。求めていない試供品やプレゼントを受け取ってしまった場合でも、人間は「負債感(借りがある状態)」を覚え、それを解消しようとします。その解消手段が「商品の購入」や「寄付」になるのです。
応用技:ドア・イン・ザ・フェイス
返報性の原理を応用した交渉術に「譲歩の返報性」があります。
1. 最初に絶対に断られるような大きな要求をする(例:10万円の壺を買って!)。
2. 相手が断った後、要求を引き下げる(例:じゃあ、この1000円の小皿でいいから……)。
3. 相手は「相手が譲歩してくれたのだから、自分も譲歩して受け入れなければ」と感じ、成約率が上がります。