
先生
(汗を拭きながら)うへぇ、今日は猛暑日だね。セミの鳴き声を聞くだけで暑くなるよ。……って、おいおいパレット君! ちょっと待った!今の気温、35度を超えてるんだぞ!?なんでそんな厚手の冬用ジャージを、上までジッパーを閉めて着ているんだ!顔が茹でダコみたいに真っ赤じゃないか。熱中症で倒れちゃうよ、今すぐ脱いで半袖になりなさい!

パレット君
……(大量の汗をかきながら、首をブンブン横に振る)……。嫌だ……絶対に脱がない。脱ぐくらいなら、このまま暑さで気絶したほうがマシだ。

先生
何を言ってるんだ! 命に関わるぞ。「痩せ我慢」や「日焼け対策」で着てる場合じゃないんだ。ほら、先生が手伝ってあげるから、そのファスナーを……(手を伸ばす)

パレット君
触らないで!!(全力で拒否して後ずさりし、自分の体を抱きしめる)先生、お願いだから僕の**『宇宙服』**を剥ぎ取らないで!これを脱いだら、僕は「外の世界」の攻撃に耐えられなくて死んじゃうんだ!

先生
宇宙服……?ただの学校指定のジャージだよ。君にとっては、それが宇宙空間のような過酷な環境から身を守るための「生命維持装置」だと言うのかい?

パレット君
そうだよ!もし今、半袖になって素肌を晒したら、直射日光が『レーザービーム』みたいに肌をジリジリ焼いて激痛が走るんだ。それに、先生たちが「涼しい」って喜ぶ風も、僕にとっては『ザラザラした紙やすり』や『無数の見えない虫』が腕を這い回るような不快感なんだよ。空気そのものが「痛い」し「痒い」んだ。

先生
日光がレーザービームで、風が紙やすり……。僕たちが心地よいと感じる自然の刺激すらも、君の敏感な皮膚には「物理的な攻撃」として届いているのか。だから、どんなに暑くても、厚手の布という「鎧」で全身をガードしていないと、痛くて立っていられないんだね。

パレット君
うん……それだけじゃないんだ。このジャージが肌に密着して、ギュッと締め付けてくれていると、誰かに守られているみたいで安心するんだ。半袖になって肌が露出すると、自分の身体の輪郭が溶けてなくなっちゃうみたいで、怖くてたまらない。暑いのは苦しいし、汗でベタベタするのは気持ち悪いけど、「痛み」や「恐怖」よりは百倍マシなんだよ。

先生
なるほど……。「暑さ」と「痛み・不安」という二つの地獄を天秤にかけて、ギリギリのところでジャージを選んでいたのか。それを無理やり脱がせるのは、宇宙飛行士から宇宙服を奪って、生身で真空空間に放り出すようなものだったんだね。分かった。もう「脱げ」とは言わない。その代わり、服の中に保冷剤を入れたり、首を冷やしたりして、この「宇宙服」の中でどうやって生き延びるか、一緒に考えよう。
■なぜ長袖を脱がないのか?真夏でも長袖長ズボン、あるいはフードを被って過ごす発達特性のある子は少なくありません。
周囲からは「我慢強い」とか「感覚が鈍い(暑さを感じない)」と思われがちですが、実はその逆で、感覚が過敏すぎるゆえの防衛行動である場合が多いのです。
■理由は「痛み」と「安心感」
■「暑くない」わけではない彼らも暑いのです。汗だくになりながら、「痛みに耐えるか、暑さに耐えるか」の究極の選択の中で、暑さを選んでいるに過ぎません。
これを無理やり脱がせると、パニックを起こしたり、痛みで授業に集中できなくなったり、最悪の場合は不登校の原因になります。
■私たちにできること「脱ぐこと」をゴールにせず、「着たままで熱中症を防ぐこと」を目指しましょう。