
リュウ
おいマスター! もし「賞金が無限に増えるゲーム」があったら、参加費いくら払う?100万? 1億?

マスター
サンクトペテルブルクのパラドックスですね。ルールはこうです。「コインを投げ続け、表が出たら賞金が倍になる。裏が出たら終了」。

リュウ
そうそう!1回表なら2円、2回なら4円、3回なら8円……。もし10回連続なら1024円、20回なら100万円、30回なら10億円だ!理論上、賞金は青天井(無限)なんだろ? だったら参加費100万円でも安いもんじゃないか?

マスター
数学的な「期待値」を計算すれば、確かに答えは「無限大」です。しかしリュウ様。あなたはこのゲームに、本当に全財産を賭けますか?

リュウ
う……。いや、よく考えたら、1回目で裏が出たら終了だよな?そしたら賞金ゼロ……いや、最低保証があっても2円か。100万円払って2円で終わるリスクがあるのか……。

マスター
その通りです。実はこのゲーム、人間の直感では「せいぜい数百円〜数千円」しか払う価値がないと感じます。「計算上の期待値は無限」なのに、「人間の感じる価値は有限」。この矛盾こそが、300年前に数学者ベルヌーイを悩ませたパラドックスなのです。

リュウ
数学的には「無限の価値がある」のに、俺たちは「価値がない」と感じる……。どっちが正しいんだ?

マスター
どちらも正しいのです。なぜなら人間にとって、1億円の価値は、1円の価値の「1億倍」ではないからです。カクテルをお出ししましょう。『ミリオネア』。
今回のテーマは「サンクトペテルブルクのパラドックス」です。
「期待値」だけで物事を判断できない、人間の心理的価値(効用)についての話です。
1. 期待値が無限大になる計算
このゲームの期待値計算は以下のようになります。
この「1円」が永遠に足され続けるため、1+1+1+… = ∞(無限大)となります。
数学だけの世界なら、参加費が「国家予算すべて」であっても参加すべきゲームです。
2. 限界効用逓減(ていげん)の法則
しかし、現実には誰もそんな大金は払いません。
それは「お金が増えれば増えるほど、1円あたりの喜び(効用)は減っていく」からです。
・砂漠で飲むコップ1杯の水は、ダイヤモンドより価値があります。
・しかし、プールの水ほどの量は必要ありません。
人間は無意識に「リスク」と「満足度」を天秤にかけており、数学的な期待値だけでは動かないのです。
本日の教訓:投資やビジネスにおいて、「理論上のリターン」だけを見てはいけません。
「最悪のケース(1回目で終了)」に自分が耐えられるかどうか。
その「心理的な限界」を知ることが、破産しないための第一歩です。