
先生
さあ、教科書の30ページを開いて。……ん? パレット君、どうしたんだ?口を手で押さえて、真っ青な顔をして。トイレに行きたいのか?

パレット君
……うう、気持ち悪い……。先生、助けて……。口の中が「洗剤」の味でいっぱいで、もう飲み込めないよ。

先生
洗剤の味だって!?まさか、理科室の実験道具でも舐めたのか?何も食べてないのに、どうしてそんな味がするんだ。

パレット君
食べてないけど、飲まされているんだよ。この教室の空気、誰かの柔軟剤の匂いで、ベトベトの**『洗剤のジュース』**みたいになってるんだ。息をするたびに、その甘ったるい液体が鼻から喉に垂れてきて、お腹の中に溜まっていく感じがする。

先生
匂いが、ジュースになって喉に垂れてくる……?僕たちにとっては「鼻でかぐ香り」だけど、君にとっては「口で味わう液体」と同じくらい、リアルな物質として感じているのか。

パレット君
そうだよ。鼻と口は繋がってるでしょ?僕にとって、強い匂いは全部「直撃する味」なんだ。さっきから、濃い砂糖水と石鹸を混ぜたものを、無理やりずっと飲まされているみたいで……。もうお腹いっぱいで、吐きそうなんだよ。

先生
それは地獄だね……。「いい匂い」どころか、強制的に異物を食べさせられているのと同じ苦しみだったのか。すぐに窓を開けて、新鮮な空気を入れよう。君にとっては、この空気はもう「吸える空気」じゃなかったんだね。
■匂いは「味わって」しまう
人間の味覚の多くは、実は「嗅覚(風味)」に依存しています。
嗅覚過敏のある人にとって、空気中に漂う強い香料(柔軟剤、香水、タバコなど)は、単に鼻先で感じるものではありません。
まるでその成分を「直接口に含まされた」かのように、強烈な「味」として感じられ、実際に胃のむかつきや吐き気を催すことがあります。
■逃げ場のない「強制飲食」
嫌いな食べ物は口に入れなければ済みますが、匂いは呼吸と共に体内に入ってきます。
彼らにとって香害のある空間にいることは、「不味いジュースや油を、24時間無理やり飲まされ続けている」のと変わらない苦痛なのです。
給食が食べられなくなったり、教室に入れない原因が、実はクラスメイトの「柔軟剤の味」にあることも珍しくありません。
■私たちにできること