
リュウ
終わった……。マスター、一番強い酒をくれ。彼女、やっぱり浮気してたわ。

マスター
確証はあるのですか?

リュウ
さっき彼女が席を外した時、スマホが光ったんだ。画面に男の名前で『昨日は楽しかったね』って通知が見えた。「男と会ってた」+「楽しかった」……これもう、浮気確率99.9%で確定だろ?

マスター
いいえ。数学的に計算すれば、その確率は**「約35%」**程度に過ぎません。

リュウ
はあ!? 35%!? んなわけあるか!他の男と楽しんでたんだぞ? ほぼ黒だろ!

マスター
リュウ様、あなたは新しい証拠(通知)に目を奪われて、**「事前確率(元々の信頼度)」**を無視しています。「新しい情報が入るたびに、確率を更新していく」。これこそが、現代数学の至宝**「ベイズの定理」**です。

リュウ
確率を更新する……?

マスター
その通知が「浮気の決定的証拠」なのか、それとも「ただの誤解(ノイズ)」なのか。感情を捨てて計算してみましょう。カクテルをお出しします。『グリーン・アイズ』。嫉妬という名の、緑色の怪物です。
今回のテーマは「ベイズの定理(Bayes’ Theorem)」です。
直感と乖離する確率を、論理的に修正するための公式です。
[Image of Bayes theorem probability box diagram]
1. 「条件付き確率」で計算する
リュウ様のケースを数式に当てはめてみましょう。
まず、以下の数値を仮定します。
2. 計算結果
この条件で「通知を見た時に、本当に浮気している確率」を計算すると、以下のようになります。
0.05 / (0.05 + 0.95 × 0.1) ≒ 34.5%
つまり、約65%の確率は「浮気していない(ただの紛らわしい通知)」なのです。
「99%黒だ!」と激昂して詰め寄ると、6割以上の確率で「ただの同僚になんてこと言うの!」と逆に振られることになります。
3. 確率の更新
ベイズの定理の真髄はここからです。
「34.5%」という結果を、新しい「事前確率」としてセットします。
そして、次の証拠を探すのです。
このように、一つ一つの行動で確率をアップデートし続け、90%を超えたあたりで初めて「尋問」を開始するのが、賢い探偵(彼氏)のやり方です。
本日の教訓:たった一つの証拠で、白黒つけようとしてはいけません。
人間は「見たい現実」に合わせて証拠を解釈してしまいます。
常に「そうではない可能性(冤罪率)」を分母に置いて考える癖をつけなさい。