
先生
さあ、みんな外に出る準備はできたかな?パレット君も早く靴を履いて……って、あれ?どうしたの? 玄関で座り込んで。靴下を脱ぎ捨てて、裸足になっちゃってるじゃないか。

パレット君
……先生、無理だよ。今日は体育、見学させて。この靴下を履いて走るなんて、僕には絶対にできない。

先生
ええ? ただの白いソックスだよ?穴が開いてるわけでもないし、サイズが小さいわけでもなさそうだけど……。「履けない」って、どういうこと?

パレット君
つま先だよ、つま先。靴下の先端にある、この「縫い目」のラインが見える?先生にはただの糸に見えるかもしれないけど、僕にとっては、ここに**『硬いワイヤー』**や**『プラスチックの棒』**が横たわっているのと同じなんだ。

先生
縫い目……?(靴下を手に取って触ってみる)ああ、確かにつま先を閉じるための縫合ラインが少し盛り上がってるね。でも、これってどんな靴下にもあるものだし、そんなに硬くはないと思うけど……。

パレット君
それは「手で触っているから」だよ。靴下を履いて、その上から靴を履くと、靴の圧力でこの縫い目が指先にギュウゥゥッと押し付けられるんだ。歩くたびに、このワイヤーが爪の生え際や指の肉に食い込んで、グリグリと削ってくる。一歩歩くだけで激痛が走るのに、これで校庭を走るなんて、拷問以外の何物でもないよ!

先生
なるほど……!靴という「密室」の中で圧力が加わることで、そのわずかなデコボコが凶器に変わっていたのか。僕たちが、靴の中に小石が入ったままマラソンをさせられるような気分なんだね。それは「我慢しろ」なんて言えないな。

パレット君
分かってくれてありがとう。……ねえ先生、だから提案なんだけど。この靴下、「裏返し」に履いてもいいかな?裏返しにすれば、この憎き縫い目のデコボコが外側に向くから、指に当たらなくなって痛くないんだ。

先生
もちろんだよ!それは君が自分で見つけ出した、素晴らしい解決策だ。さあ、裏返して履いて、思いっきり走っておいで!
■なぜ「縫い目」ごときで泣くのか?朝、玄関で子供が「靴下を履きたくない!」と泣き叫んで暴れる……。
多くの保護者を悩ませるこの光景の原因は、わがままや気分のムラではなく、靴下のつま先にある「縫合線(ロッソ)」の不快感にあることが非常に多いです。
■指先は感覚の集中スポット足の指先は、本来地面の状況を感じ取るために神経が集中している場所です。
触覚過敏のある子にとって、靴の中で「一本の硬い糸」が常に指に押し付けられている状態は、健常者が想像する「気になる」レベルを遥かに超え、「常に指を挟まれているような痛み」として脳に伝わっています。
この状態で「勉強に集中しろ」「運動しろ」と言われても、脳のスペックは痛みの処理に奪われてしまい、不可能です。
■私たちにできること「慣れろ」と強要するのは、靴の中の小石を我慢しろというのと同じです。物理的な解決が必要です。