
カイ
いやー、さっきのコンビニ店員、参りましたよ。レンさん聞いてください。レジ打ちは遅いし、お弁当の温め方も分かってないし。ああいう「要領の悪い人」を見ると、ついイライラしちゃうんですよね。もっとシャキッとできないのかって。

レン
やあカイ。お怒りだね。その店員さんは、「生まれつきトロい性格」だから仕事が遅かったのかな?

カイ
見れば分かりますよ。動きにキレがないし、オドオドしてるし。あれは能力の問題ですね。僕ならもっと効率よくやりますよ。

レン
ふむ。ではカイ、君が新入社員だった初日のことを覚えているかい?コピー機の使い方も分からず、電話対応で噛みまくって、先輩に怒られていたあの日のことを。

カイ
うっ…。そ、それは初めてだったから仕方ないじゃないですか!緊張して頭が真っ白だったし、マニュアルも読んでなかったし…。

レン
そうだね。君の失敗は「不慣れな状況」のせいだった。じゃあ、さっきの店員さんが「今日入ったばかりの新人」だった可能性は考えないのかい?

カイ
え…? 今日入ったばかり…?いや、名札までは見てなかったですけど…。

レン
他人のミスを見ると、我々はすぐに「能力が低い」「やる気がない」と**性格や資質**のせいにする。だが実際は、ただ「状況(経験不足や体調不良)」が悪かっただけかもしれない。これを**「根本的な帰属の誤り」**と呼ぶんだ。

カイ
…そうか。僕も新人の頃、「できない奴だ」って思われてたのかな。そう思うと、イライラしてたのが申し訳なくなってきました。

レン
自分には「事情」があるように、他人にも「事情」がある。それに気づくだけで、世界はもう少しだけ優しく見えるはずだよ。次に行った時は、少し広い心で待ってあげなさい。
やあ、レンだ。今回のテーマは「根本的な帰属の誤り(Fundamental Attribution Error)」。
他人の行動の原因を推測する際、その人が置かれている「状況(環境)」の影響を過小評価し、その人の「性格(気質)」の影響を過大評価してしまう心理バイアスのことだ。
■カストロの実験(1967年)このバイアスを証明した有名な実験がある。
心理学者ジョーンズとハリスは、学生たちに「カストロ議長(キューバの指導者)」について書かれた小論文を読ませた。
その際、書き手が「無理やり命令されてカストロ擁護の文章を書かされた(状況)」ことを事前に伝えていたにもかかわらず、読み手の多くは「この書き手は、本心からカストロを支持しているのだ(性格)」と判断してしまった。
つまり、人間は「強制された状況」という明白な情報があってさえ、それを無視して「個人の意思」だと思い込んでしまう強力な癖があるんだ。
■なぜ「性格」のせいにするのか?理由はシンプルで、「状況」は見えにくいからだ。
目の前の人物(店員や部下)は視覚的に目立つが、その背後にある「新人研修不足」「家庭のトラブル」「体調不良」といった背景情報は目に見えない。
脳は複雑な推測を嫌うため、目に見える「その人」に原因を求めるほうが、処理として楽なんだ。
■行為者-観察者バイアス面白いことに、このエラーは「他人(観察者)」を見るときには起きるが、「自分(行為者)」を見るときには起きない。
自分が遅刻したときは「電車が遅れたから(状況)」と言い訳できるのに、他人が遅刻したときは「ルーズな人だ(性格)」と断罪する。
この非対称性が、人間関係のトラブルの大きな原因になっている。
■処方箋:カメラを引く誰かのミスにイラッとしたら、心の中でカメラのアングルを引いてみよう。
「もし私が、まったく同じ状況に置かれたら、完璧にできただろうか?」その人の「能力」を疑う前に、その人を取り巻く「環境」を想像すること。
それが、無用なストレスから自分を守り、他人を許すための知的なテクニックなんだよ。